
大学の研究から始まり、私は長年データベースの技術とビジネスに携わってきました。しかし、その技術の登場から何十年と経過しデータベースの技術は成熟して、新しい付加価値やイノベーションが生まれにくくなりました。私はもっと早くにリレーショナルデータベースはオブジェクト指向データベースなどに取って代われると思っていましたが、よくここまで長持ちしたと思います。それも、正規化されたテーブルでデータを扱うというシンプルな構造(それが故に結合の処理の難しさがあった)が良かったのではないかと考えます。
今、この市場も大変革が起ころうとしています。ガートナーは「2022年までに、新規の社内アプリケーションの70%以上がOSDBMSまたはOSDBMSベースのdbPaaSで開発され、所有しているRDBMSインスタンスの50%が移行済みか、移行中となっているだろう」※1と予測しています。単一の製品から、PaaSとしてのデータベース、dbPaasとして扱われることが多くなってきました。
私のデータベースの歴史の中には、常にOracle社がいました。疑うことなく、Oracle社は、伝統的なデータベース市場の長年のリーダーです。しかし、データベースの市場の変化とともに、Oracle社のデータベースを取り巻く環境も大きく変わってきています。と言っても、Oracle社のデータベースが今すぐなくなるわけでなく、まだまだ主要なデータベースとして利用されていきます。このOracle社のデータベースについて、日本を含む18カ国で、回答者237名で、リミニストリート社が調査を実施しましたので、概要を共有します。フルレポートは、リミニストリートのウェブサイトから無料でダウンロードいただけます。※2
まずは、Oracle Database(DB)インスタンスをいくつ保有していますか?という質問については、75%以上の回答者が10個以上のOracle DBインスタンスを保有していると答えています。日本を含むアジアパシフィック地域(APAC)では、59%の回答者が10以上のOracle DBインスタンスを保有していると答えています。APACの方が10個以上の比率は少ないですが、それでも約6割が10個以上のインスタンスを保有しています。全体をみると、500個以上が17.3%になっています。これはもはやデータベース環境の監視と維持が難しい状況で、現に68%の回答者が最新のリリース情報を入手するのは難しいと考えていると答えています。
そして、67%の回答者が、2020年12月までOracleによるフルサポートが終了するデータベースインスタンスを使用していると答えています。25%の回答者が、2020年12月までにOracleによるフルサポートが終了するリリースについて把握していない、または混乱していると答えています。企業は、フルサポートが受けられないデータベースに対して保守サポート費用を全額支払っています。このようなインスタンスが原因で、コストが高くなり、貴重なITリソースを浪費して、ビジネスが中断するリスクが高くなります。そしてフルサポートが受けられないということは、セキュリティリスクがあることを意味します。42%の回答者が、パッチの適用にかかるコストと労力に加えて、セキュリティを上位3つの課題の1つとして挙げています
予算を見てみますと、コストの懸念が前回の2017年の調査から16%増加しており、前回の調査よりもライセンシーはコストをかける価値を感じなくなっています。 97%の回答者が、Oracle Databaseに関する課題の上位3つのうちの1つはコストであると考えています。73%の回答者は、価値のあるデータベースの機能強化が十分に行われていないと感じており、94%のAPACの回答者は、価値あるデータベースの機能強化が十分に行われていないと感じています。これは冒頭で述べたように技術の成熟からくるものだと思います。それでも、同額の保守費用が必要かという疑問がますます増えていきます。さらに、フルサポートを維持するためにはアップグレードする必要があるという絶え間ないベンダーからのプレッシャーが、ビジネスを混乱させ、資金やリソースを浪費させています。
このようなOracle社の成熟&高額な現状があり、「イノベーションのジレンマ」を実践するように、下からオープンソースやクラウドの代替品が勢力を急速に拡大しています。市場では既に、オープンソースやクラウドの代替品を含む340以上のデータベースが利用可能で、データベース市場ではコモディティ化が起こっています。現に、Oracle DBの使用率を引き下げている回答者は、前回の調査の8%から41%に急増しています。オープンソースデータベース調査の上位はMySQL、PostgreSQL、MongoDBです。商用データベースのコストを削減し、成果が出るまでの時間を短縮し、ライセンスコンプライアンスの問題を回避するために、企業はこれらの選択肢を積極的に検討しています。
オープンソースやクラウドの代替品に加えて、第3社保守サービスによって、よりよい保守サービスを、最大90%削減することができ、Oracle Databaseでの利用可能な選択肢があります。現在の年間保守サポート費用の価値を把握し、ぜひこの選択肢を考慮いただければと思います。そして、削減した予算で、ビジネスに付加価値を生むDXプロジェクトを推進していただければ幸いです。
※1出典:ガートナー『State of the Open-Source DBMS Market, 2019』Merv Adrian, Donald Feinberg、2019年10月17日(Gartnerのサブスクリプションが必要)
https://www.gartner.com/en/documents/3970418/state-of-the-open-source-dbms-market-2019
※2調査レポート: Oracle Databaseと サポートの価値に関する ライセンシーの見解: ダウンロードはこちらから