ERPは現行バージョンを使い続けるとの回答が多数、 S/4HANAへの移行に取り組むユーザーは少数派に
既存の安定したECCリリースを基盤とする戦略で、ハイブリッドITを活用 50%超が、S/4HANAへの移行コストを1,000万ドル~1億ドルの範囲と想定
2017年6月22日、ラスベガス発 – Oracle®およびSAP®などエンタープライズソフトウェア向けの独立系保守サービスを提供するグローバルリーディングカンパニーのリミニストリートは、世界中のSAPのライセンシーを対象に行った最新調査の結果を明らかにしました。
この調査は、SAPライセンスを利用するユーザーのアプリケーションに関する戦略や将来の計画を把握することを目的として行われたものです。
この結果において特に注目すべきことは、安定稼働する既存のSAP ERPのバージョンを使い続ける戦略を採るとした回答者の数が大勢を占めた点であり、その割合は全体の89%にも上ります[1]。これは、機能が豊富な現状のリリースがビジネスニーズを十分に満たしており、導入を計画しているハイブリッドITモデルの基盤になるとの判断によるものです。
さらに回答者の65%が、S/4HANAへの移行を計画していないか、現時点では着手していないとしています[2]。その理由としては、移行によるビジネス上のメリットについて確証が得られない、どれほどのROIが見込めるのか不透明であるなどが最も多く挙げられています。
今回の調査内容をまとめたレポート 『Rimini Street Survey:2017 SAP Applications Strategy Findings』は、各業種のさまざまな規模の組織に属するCIO、CTO、IT担当バイスプレジデント、IT担当者、IT管理者からの回答を集計したもので、その調査対象の地域は、北米、欧州、南米、アジア太平洋地域となっています。
SAP ERPの価値を最適化するハイブリッドIT戦略
現行のSAP Business Suiteアプリケーションを使い続ける予定であるとした回答者のうち、その30%がすでにハイブリッドIT戦略を採用しています。これにより 「Systems of Record(SoR)」でコアとしての役割を果たすSAPシステムの価値を最大限に高めつつ、コストやリソースを削減して再配分することで 「Systems of Engagement(SoE)」を通じ、迅速かつ柔軟なイノベーションの推進を実現しています。
ハイブリッドITは、SoR、SoEのどちらにとっても最適な戦略です。この戦略を採用すれば、安定したERPをコアとして信頼性の高いビジネスを展開できる一方、同時に、クラウドやモバイル、アナリティクスなど、革新的な新しいアプリケーションやサービスを迅速に導入することも可能になります。企業にとっては、SAPだけでなく、SoE実現のためにあらゆるテクノロジープロバイダーのシステムを柔軟に採用できるため、短期間でイノベーションを果たし総合的な競争力を獲得することができます。
また、SAP ERPをプライベートクラウド環境やホスト環境で運用し、導入にリスクとコストがかからないクラウドモデル活用によって多くのメリットを得る企業も急増しています。ハイブリッド戦略を採用すれば、経営の負担となる高額なアップグレードにかかるコストを削減でき、IT予算を新たなイノベーションへ投資できるため、迅速にビジネス上の目標を達成することが可能になります。
Deal ArchitectのCEOであり、『SAP Nation』の著者でもあるVinnie Mirchandani氏は次のように述べています。
「コアのERPを維持しながらイノベーションを実現する戦略についてSAPの顧客と会話をしたときに、最もよく挙げられる戦略の1つがハイブリッドITのアプローチです。SAP Business Suiteはきわめて安定性が高く、機能も際立って豊富です。しかしコアのERPをとりまく環境に関してはイノベーションが成功しているとはいえません。それゆえ、2段階のアプローチを取るのがよいでしょう。実績のあるコアの部分はそのまま維持しながら、その周辺の機能に最新のソリューションを多く活用してイノベーションを進めていく形です。現在このマーケットには、いくつかの企業から、俊敏性に優れた機能が提供されています」
コストがかかりリスクも高いS/4HANAへの移行、期待できるROIはごくわずか
また、今回の調査では、S/4HANAへの移行に取り組んでいるライセンシーの数が多くないことが明らかになりました。その理由として、「移行によるビジネス上のメリットについて確証が得られない」、「どれほどのROIが見込めるのか不透明である」という点を多くの回答者が挙げていますが、「移行や再実装に多額のコストがかかる」ことを理由にした回答も多数みられました。
S/4HANAへの移行を進めていると答えた回答者のうち56%が、移行に伴う再実装の総コストを1,000万ドルから1億ドル(約10億円~100億円)の範囲で見積もっていました。企業にとってこれはきわめて高額なプロジェクトであり、その投資効果を正当化するのは難しく、金額的にも多くの組織にとって無理があるというのが現実です。
その他の注目すべきポイント
- 47%の回答者が、SAPの保守サポート費用は高すぎると回答
全体のほぼ半数の回答者が、SAPの保守サポート費用は高すぎると感じており、「もはや管理不能」との声もありました。このような高額のサポート費用を支払い続けていくと、予算が圧迫され、リソースが先細りになります。
一方、リミニストリートのサービスを利用しているお客様では、保守サポートの総コストの削減を着実に進めており、その削減規模は最大で90%にも達しています。これまでベンダーの提案に従って行っていたアップグレードを取りやめたほか、セルフサポートの財源の確保が不要になり、ベンダーが対応していないカスタマイズ部分のサポートのために別途予算を用意する必要もなくなったためです。 - SAPの保守サポートの問題点として上位を占めた回答
SAPの保守サポートの何が問題となっているのかを、アンケート調査の質問(複数回答可)の回答を基に探ったところ、「問題の解決に時間がかかり過ぎる」(36%)、「カスタマイズ部分のサポートがない」(33%)、「問題を解決するうえでの専門知識や経験が不足している」(29%)との回答が上位3つを占めました。これらは、顧客の要望とSAPのサポートとの間には大きな乖離があって、SAPが現状提供しているサービスよりも質が高く応答性の良い他のソリューションが必要とされていることを示しています。
リミニストリートではこれらの問題をすべて解決できます。SAPアプリケーションのカスタマイズ部分を完全にサポートし、このアプリケーションに関する平均15年の経験を持つ専任サポートエンジニア(PSE)を指名するほか、緊急対応を要するケースに15分以内の応答をSLAで保証しています。
リミニストリートのCEO、Seth Ravinは次のように語っています。
「この調査で注目すべきところは、CIOや、ITに関する意思決定者は、ビジネス要件を満たすこと以上に、安定性の高い現行のSAP ERPシステムから価値を最大限に引き出すことを重要視している点です。つまり、まだ開発途上にあり、現段階では全面的な再実装を正当化できるほどビジネス上のメリットが認められない新規のプラットフォームは、現実的な選択肢ではないというわけです。また、この調査からは、ハイブリッドITのようなイノベーション戦略が推し進められている現状をうかがい知ることもできます。ハイブリッドITのアプローチであれば、有用なイノベーションや機能がSAPから新たに提供されるのをいつまでも待たずとも、競争力を確保することができます。リミニストリートは現在、IBM、マイクロソフト、オラクル、SAPのソフトウェアを利用している約1,300のお客様に保守サポートを提供しています。これらのお客様は、プレミアレベルのエンタープライズソフトウェアサポートが利用できるようになったほか、トータルの保守サポートコストを最大90%削減することにも成功しており、削減できた予算を戦略的なビジネス上の取り組みに再投資することが可能になっています」
調査レポート 『Rimini Street Survey:2017 SAP Applications Strategy Findings』 (英語)をダウンロードするには、こちらをクリックしてください。
SAPのアプリケーションを導入している皆様がご利用いただけるサポートサービスの詳しい情報もご用意しています。詳しくはこちらをクリックしてください。
1, 2 リミニストリートによる調査レポート『Rimini Street Survey:2017 SAP Applications Strategy Findings』、2017年5月