ERPの導入を凌駕するAIブーム

Pat Phelan
VP, Market Research
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ERPの導入を凌駕するAIブーム

わずか数ヶ月の間に、AIは大きく発展しました。しかし、ほとんどのCIOは、まだAIは期待に応えるほどのレベルではない事に気づいています。この記事では、AIをERPに使えるかどうかを判断する時に、どのように検討するのが良いのか紹介します。

今、AIが話題になっていますが、ERPのようなエンタープライズ・アプリケーションのブレイクアウト・テクノロジーのように、潜在的なメリットと課題を理解し、新しい技術や機能を既存のコードやプロセスに導入したり、新たなリスクを減らしながら機能を活用した新しいものを展開するには時間がかかります。

最近のCIOの記事でPat Brans氏は、次のように述べました。「たくさんのCIOが、生成AIに目を向け始めているが、市場に出回っているAI技術は、まだ期待に応えるようなレベルでは無いと考えているCIOは多い。

AIによる変革は、ERPにはまだ早い

リミニストリートの顧客や見込み客数社に、どのように生成AIをERPに活用しているかを聞いところ、Brans氏の考えと一致することが分かりました。AIに夢中な人もいれば、それと同時に冷めた意見も沢山ありました。AIへの関心は非常に高いのですが、運用可能で、ましてや実績のあるERP固有のユースケースを見つけるのは難しいのです。

私たちが話を聞いた人の多くが、AIが組織のゲーム・チェンジャーになることを期待していていましたが、AIがエンタープライズ・アプリケーションの成果について、どこでどのように改善できるかについては、まだ計画や分析の段階にとどまっていました。McKinseyは、次のように述べました。「生成 AIは、年間2.6兆ドルから4.4兆ドルに相当する利益をもたらす可能性がある。

私たちが話を聞いた人の中に、AI技術の成熟を傍観して待っているERPリーダーたちはいませんでした。SaaS ERPモデルのような大きなERPの変化や、メインフレームからクライアント/サーバー・モデルへの移行のように、ほとんどの組織が新しいテクノロジーを受け入れるのに何年もかかったのとは正反対です。

ERPでは、コアシステムのエッジで生成AIの取り組みが行われている

ERPのようなエンタープライズ・アプリケーションの場合、一般的にコードはバックオフィス業務の遂行に利用できるところまで成熟しており、ビジネス・トランザクション(購入、支払い、在庫の追跡など)を記録する仕組みは最適化されています。逆に、カスタマー・エクスペリエンスとナレッジ・ハンドリングは、早期導入企業がビジネス成果を向上させる成果を見ている重要な分野であり、アナリティクスもその一つで、すべてコアERPのエッジで行われます。

ERPベンダーが追いつくにはまだ時間がかかる

ERPの誕生以来、AIは、どの情報技術よりもビジネスの仕組みを変える可能性を秘めており、さらに組織の主な関心を考慮すると、これまでのテクノロジーよりも急速に変化しているように見えます。ビジネスの基礎を変えることで、エンタープライズ・ソフトウェア・ベンダーは最終的に、生成AIのように周辺機能を構築するツールを提供するのではなく、ERPのコア・コードを書き換える必要に迫られるでしょう。しかし今のところは、エッジでイノベーションを起こしながら、導入済みのERPシステムを稼働させ続けるのがほとんどのERPユーザーにとって無難でしょう。

SAPやオラクルのようなERPベンダーはAI開発ツールを導入していますが、どのようにAIを自社ソフトウェア製品にパッケージ化し、価格設定し、活用するかを理解するには時間がかかるかもしれません。暫定的な製品をいち早く採用したベンダーは、AIの成熟に伴って急速に進化する価格設定モデルや可用性の泥沼にはまる危険性があります。例えば、SAP S/4のオンプレミスやプライベートクラウドの顧客は、取り残されるリスクがあります。IT Jungleは、次のように述べています。「ERPの新機能、サステナビリティとカーボンアカウンティングのソリューション、AIの新イノベーションはすべて、クラウドでのみ利用可能で、RISEとGROW with SAPを通じて提供される。(SAPのCEO、Christian Klein氏の 2023年第2四半期決算説明会からの引用)」

ERPベンダーと顧客が抱える2つの大きな課題

1. ERPベンダーは、自社の主力製品に一般的なAI機能を組み込むと主導権を失うリスクがある。

ERP向けの生成AIのユースケースが進化し、ユーザーがAI開発ツールを使ってビジネスの仕組みを改善する新しいコード作成に精通するようになれば、ERPのデプロイメントを個別化する複雑に入り組んだAIアプリが出来ます。ベンダーは、標準機能とコア・コードの定義を再考する事になります。Brian Sommer氏は、最近のDiginomicaの記事で次のように述べています。「ベンダーは、(生成AIを使って)何を開発するのか、いつ出荷するのか、企業(とそのデータ)をどのようなプライバシー問題にさらすのか、どのように販売し価格を設定するのか等々について、具体的な考えをまだ持っていません。

これは、ERPが修正するために導入されたベスト・オブ・ブリードの泥沼を彷彿とさせますが、AIのコードは各組織に固有のものとなるため、さらに悪化します。AIの急速な導入により、ERPベンダーは次世代ERPの定義をコントロールする能力を失うリスクに晒されるでしょう。

2. 顧客独自の目的に合ったAIソリューションを、エンタープライズ・ソフトウェア・ベンダーが提供するAIに置き換えると、価格も上がり、複雑になる。

ERPの顧客にとって、生成AIツールは、ERPシステムを取り囲む究極のカスタムコードを迅速に展開することを可能にします。これは、カスタマイズの要素を悪化させると考えられます。カスタムコードを排除し、ERPベンダーの次世代コードセットへのアップグレードに置き換えるという、確固たるビジネスケースを構築するのは難しいでしょう。特にベンダーが提供する機能が、各組織が構築したカスタムAIの1対1ではなく、1対多数のソリューションで設計されている場合は尚更です。

AIはERP向いているが、リスクに注意

PwCのManaging the Risks of Generative AIによると、他の新興テクノロジーと同様に、生成AIには以下のような重大なリスクがあります:

  • プライバシーへのリスク
  • サイバーセキュリティの脆弱性
  • 使用されるデータやAIが生成する結果に関する規制コンプライアンス
  • 第三者との関係 – サポートやメンテナンス、エラー解決、テストなどを誰が行うか
  • データとソリューションに関する法的義務
  • 知的財産権

上手くAIを使った運用方法はまだ開発段階であり、まだ広く浸透していないものはコストもかかり、悪い変化を起こす可能性もあります。

アドバイス:

  • 各AI構想のリスク評価とリスク軽減計画の策定に時間をかけ、そして撤退する条件、もしくは加速させる条件を確立した方が良いでしょう。
  • AIを利用する際は、ERPポートフォリオにAIコンポーネントを追加することによって、一貫性のあるサポートとサービスの提供にどのような影響を与えるかを考慮した方が良いでしょう。
  • 統合アプローチを使用し、関与するベンダー、製品、サポート・サービス・レイヤーの数を減らせば、ポートフォリオの運用とサポートが、よりシンプルかつスケーラブルなものになります。さらに、統合サポートとサービスをアウトソーシングすれば、価値提案を強化することができますが、その場合は慎重に計画してください。