SAPの一方的なクラウド推進にどう対応すべきか?

Luiz Mariotto
GVP, SAP Product Management
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SAPの一方的なクラウド推進にどう対応すべきか?

SAPがクラウド戦略を明確にすればするほど、SAPがオンプレミス・ソリューションでERPのトップシェアを築くことに貢献した忠実な顧客の将来は不透明になっていきます。IT Jungleは、最近のSAPの発表について「SAPがオンプレミス・ソフトウェアのコストを引き上げ、イノベーションの縮小を実施」と要約しました。

まず、7月に行われたアナリストとの第2四半期決算説明会で、SAPのCEOであるChristian Klein氏が、次のように宣言しました。「SAPの最新のイノベーションと機能は、RISE with SAPをイネーブラーとして使用する、SAPパブリッククラウドとSAPプライベートクラウドでのみ提供されます。」これには、SAPが投資しているという新しいAIと持続可能性のイノベーションも含まれています。

そして、その1週間後に発表された2024年のSAPサポート料金の調整で、SAPサポート契約の年間料金が、今年既に値上げされた3.3%に上乗せで、更に最大で5%上がることが発表されました。

RISEを採用するか、取り残されるか

SAPは、多くの既存顧客がずっと恐れていたことを方針として打ち出したのです。SAPソフトウェアのライセンスをクラウドベースのサブスクリプションに変更しないのであれば、SAPは彼らを置き去りにすることも厭わないかのようです。

さらに、Forresterのシニアアナリストである Akshara Naik Lopez氏は、すべての非クラウドバージョンにおけるイノベーション機能の終了について、「最近 S/4HANA の実装をオンプレミスまたは RISE with SAP オプション以外のハイパースケーラに移行した顧客にも影響が及ぶため、SAP の顧客にとっては二重の痛手となりそうだ」と指摘しています。

一部の企業は次のように考えるでしょう。「SAPに25年間投資し、常に最新のソフトウェアを購入し、最新の状態に保ってきたが、ベンダーに言われるがまま、重要なシステムをクラウドに移行するために何百万ドルも費やすべきだろうか?」

SAPがクラウド戦略を追求する理由を理解するのは難しいことではありません。同社は財務アナリストに対し、今年第2四半期のクラウド関連の売上総利益率は72.2%まで上昇したと語っています。理解しがたいのは、SAPが忠実な顧客を置き去りにしようとしているように見えることです。

多くのSAP顧客はECCを手放したくないと考えている

SAPは昨年、オンプレミスのERP Central Component (ECC) 6.0のメインストリームサポートを2027年(ECC 6.0のエンハンスメントパッケージが6より下位の場合は2025年)に終了すると発表しましたが、メンテナンス価値が既に半分に下がっているため、ECCを使用している多くの企業は第三者保守を選択しています。

Gartnerのシニア・ディレクター・アナリストであるChristian Hestermann氏は、The Registerに次のように語りました。「今まではERPベンダーにサポート料を支払うことで、サポート・ホットラインやバグ修正といったメンテナンスやエンハンスメントパッケージへのアクセスが受けられましたが、SAPは2015年のS/4HANAのリリースでこのようなECCのメンテナンスを止めました。つまり、当初SAPが約束した価値の半分のサービスしか顧客は受けることが出来なくなりました。なぜ顧客がこれにもっと強く反対しなかったのか理解できません。」

SAPinsiderは、次のように報告しています。「2023年6月の時点で、SAP Business Suiteのコアアプリケーションを稼働させている組織のうち、SAP S/4HANAのライセンスを取得しているのは半数に満たず、導入を完了しているのはさらに少数である。これは多くの組織が、SAP ERPのバージョンの今後の保守終了期限によって影響を受ける可能性が高いことを意味している。」

SAPの一方的なクラウド推進アプローチに従う以外の方法もあります。SAPが約束したイノベーションだけが、新機能を導入する方法ではありません。

今は、IT部門が新しいビジネスアイデアに目を向け、オープンマインドで考え、中核となる安定したERPの周辺を革新する柔軟な選択肢を検討する時代です。多くの企業は、高度にカスタマイズされたミッションクリティカルなコアERPプラットフォームに依存しており、その信頼性は高く、ベンダーがアップデート、アップグレード、マイグレーションを指示するたびに、統合を再構築することを望んでいません。特に、重要なシステムをクラウドに移行する際のリスクを考えると、ベンダーが途中で方針を変える場合はなおさらです。

SAPのドイツ語圏ユーザーグループDSAGの理事長であるJens Hungershausen氏は、The Registerに次のように語りました。「SAPがS/4HANAのサポートを延長したとき、クラウドかオンプレミスかの区別はありませんでした。S/4HANAは顧客が次に行くべきものだ、というメッセージだったのです。」

S/4HANAの代わりに、顧客は安定したコアのERPを維持したまま、周辺を革新することでそれを強化することを選ぶかもしれません。賢明なユーザーは、ますますコストが増し、有用性が低くなっているベンダーサポートを削減し、自分たちが適切と考えるイノベーションに資金を充てる方法を見出しています。

リミニストリートは、SAP ECCおよびS/4HANAのオンプレミスライセンスを持つ顧客に対し、15年間にわたり安心で充実したサポートとマネージドサービスを保証することを改めて明言しました。

20年近くにわたり、リミニストリートは、顧客が既存の投資のROIを最大化し、サポートコストの削減によって実現する節約を活用して、安定したコアERPを強化することができる最善のオプションで選択的に革新することを支援してきました。既存のSAPへの投資でより高いROIを達成する方法についての詳細なレポートについては、当社のSAP Savings Calculatorをご覧ください。