
- 販売代理店向け請求プロセスの改善
- SAP ECC 6.0の寿命を延長
急速に進化するデジタル環境において、多くの企業は最新ソフトウェアへの移行を迫られることが少なくありません。しかし、日本国内最大級の石油元売企業である出光興産にとって、重視すべきは明確でした。安定性、効率性、そして継続的なデジタル変革の取り組みを支えるための、将来を見据えたコンポーザブルERP戦略です。この113年の歴史を持つ企業は、燃料油、基礎化学品、高機能材、電力・再生可能エネルギー、資源という5つの事業セグメントで構成されており、2050年までにカーボンニュートラルと循環型社会の実現を目指して複数の取り組みを進めています。この大きな目標のもと、デジタルICT推進部の次長である澤井孝義氏とそのチームは、出光興産を「デジタルファースト」なIT組織へと進化させようとしています。
コンポーザブルアーキテクチャでSAP ECC 6を拡張
出光興産にとって、デジタルファーストな組織へと変革することは、現行のITエコシステムを再考することを意味していました。中でも重点的に取り組んだのが、販売代理店向けの請求システムです。このシステムは当初、モノリシックなSAP Business Oneの枠組み内で構築されており、さまざまな課題を抱えていました。入金と支払いにおける単位の違いによる請求の不一致は手作業での対応を必要とし、請求から回収までのサイクル全体を遅延させていたのです。そこで、SAPから請求機能を切り離し、周辺に特化型アプリケーションを組み合わせることで、出光興産は請求処理のスピードを高め、遅延や手作業への依存、さらにはエラーの可能性を低減することができました。
SAP S/4HANAへの移行も一つの選択肢ではありましたが、出光興産は徹底的なアプリケーション合理化を行った結果、S/4HANAの利点は自社の業務要件に合致しないと判断しました。データベースのパフォーマンスには特に問題がなく、AIについても特定ベンダーに依存しないアプローチを重視しており、S/4HANAが提供するユーザーインターフェースの更新にも大きな価値を感じなかったのです。そして最終的に、これらの機能はいずれも請求プロセスの改善という同社の目標達成には貢献しないと結論づけました。その代わりに出光興産が求めたのは、ベンダーのプラットフォームにコアからエッジまで縛られることなく、販売代理店向け請求プロセスを柔軟かつ迅速に調整できる、効率的でコンポーザブルなソリューションでした。
安定したコアとしてSAP ECC 6を据えたうえで、出光興産はコンポーザブル戦略を採用し、SAPを中心に最適なアプリケーションを構築・統合できる柔軟な仕組みを構築しました。SAPの「サイド・バイ・サイド拡張性」アプローチのようにSAPエコシステム内に限定される方法とは異なり、出光興産は販売代理店向け請求などの機能について、SAPとは独立した環境で独自のソリューションを開発し、高額なカスタマイズを回避したいと考えていました。より柔軟なシステムを使うことで、同社は特定の業務プロセスを強化するための専用アプリケーションを自在に組み合わせることができ、フル統合型ERPの硬直性を避けることが可能になったのです。この方針転換は、従来の密結合されたERP環境からの大きな脱却を意味し、製造から人事まで、組織全体の多様な業務ニーズに応える柔軟なアーキテクチャの採用へとつながりました。
コンポーザブルなアプローチによって、販売代理店向け請求プロセスに最適化されたソリューションを柔軟に選択できるようになりました。これにより、出光興産は販売代理店向けのユーザー体験を向上させ、請求処理の高速化と精度の向上を実現しました。このモジュール型の構成により、コアERPシステムを妨げることなく、ビジネス要件の変化に応じて新たな請求シナリオへ柔軟に対応できるようになっています。「私たちは、リミニストリートのサポートを受けながら、既存のSAP ECC 6.0環境に対して機能を再設計・追加しています。その結果、データ品質の管理が向上し、自動化も進みました。リミニストリートとのパートナーシップにより、ビジネスに支障をきたすことなくデジタル変革を加速できています」と澤井氏は語ります。
安定性とコスト効率が、制限のないイノベーションを可能に
出光興産がS/4HANAの即時導入を見送った判断は、同社のIT全体像に対するより広いビジョンを反映しています。同社は、特定ベンダーに縛られたAI戦略に依存するのではなく、SAPに依存しないエンタープライズ全体でのAIアプローチを構築しており、これによりビジネスニーズに基づいた、より包括的な形でAIを統合することが可能になっています。澤井氏は、次のように語りました。「リミニストリートのサポートにより、ベンダーの都合ではなく、自社のビジネスニーズを優先した判断が可能になりました。その結果、テクノロジーロードマップを妨げるものがなくなり、私たちの目指すシステム像に向けて自由に設計・運用していけるようになりました。」さらに、リミニストリートとの提携によって、澤井氏は年間のベンダー保守費用を半減させ、その分のコストを継続的なイノベーションのための投資に振り向けることができました。
SAP ECC 6の継続利用を選択したことで、澤井氏は、自社のITロードマップにとって価値のない機能を得るために、時間と費用をかけてアップグレードを行う必要がなくなり、その分の予算とリソースをイノベーションに集中させることができました。Rimini Support™ for SAP ECCにより、出光興産は安定したECC 6のコア環境を維持できており、そのうえで最適なアプリケーションを組み合わせることで、請求処理の迅速化、マニュアル作業の削減、エラーのリスク低減といった目標の達成に注力できるようになりました。
出光興産がコンポーザブルアーキテクチャへと移行するうえで、この安定性は極めて重要でした。なぜなら、コアシステムに障害が発生すれば、周辺のモジュール型アプリケーションにも影響が及ぶ可能性があったからです。リミニストリートの年中無休のプロアクティブサポート体制と、深いSAPの専門知識に基づいて、出光興産はECC 6に蓄積されたデータを最大限に活用し、SAPへの投資価値を引き延ばし、従来型ERPの制約に縛られることなく、デジタルファーストな組織づくりを推進することができました。澤井氏は次のように語りました。「今後もリミニストリートとのパートナーシップを長期にわたり継続し、ミッションクリティカルなシステムを常に利用可能な状態に保とうと考えています。そして事業の将来のニーズを計画していく中で、私たちはSAPへの投資を最大限に引き出そうと思います。」
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