S/4HANAの強制アップグレードに価値を見出せないSAP ECC6 EHP0-5の顧客たち

Scott Hays
Senior Director, Product Marketing
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SAP のメインストリームサポート終了(2025 年 12 月 31 日)の期限が、SAP ECC 6 バージョンEHP0-5の顧客に迫っています。

SAPはEHP0-5の延長サポートを提供しておらず、サポート終了の期限は、SAPが設定した分かれ道です。そして期限後に、顧客は自動的にカスタマースペシフィックメンテナンスに移行することになりますが、カスタマースペシフィックメンテナンスで、SAPは法改正に伴うリリースの更新や、新しいテクノロジーをサポートするための適合を行いません。1 さらに、SAPinsiderによると、カスタマースペシフィックメンテナンスの費用は別途交渉する必要があるので、新たな問題を解決するためには、新たな料金が課される可能性もあるのです。2

どのような顧客が、この期限の影響を受けるのでしょうか?ガートナーの調査によると、2024年第2四半期時点で、ECC顧客の63%がS/4HANAのライセンスを購入していません3 ドイツ語圏のユーザーグループ・カンファレンスで発表されたSAPのデータによると、ECC顧客の半数はEHP0-5を利用しており、2025年以降のサポート延長の対象にはなりません。さらに、ドイツのSAPコンサルタント会社CrossloadのマネージングディレクターであるJens Gleichmann氏によると「2027年のメンテナンス終了ばかりが話題に上がるため、これらの顧客の40%は2025年の期限を認識していない」とのことです4いずれにしろ、多くの顧客は、セルフサポート、第三者保守、アップグレードのいずれかの選択を迫られることになります。

多くのEHP0-5のユーザーは、アップグレードする機会がありましたが、その価値を見出せませんでした。以下の絵は、EHP5以降のリリースに対して多くの顧客が「いいえ、結構です」と反応したこと表しています。

何が起きているのか?

顧客は「壊れていないなら、直さなくていい」という昔からの知恵を守っているのです。これは、ECCの安定性が高く、機能性が有効であることの証だと考えることができます。顧客は、ECCがうまく機能し、必要なことができることを理解しているので、アップグレードの必要性を感じていません。これらのEHP0-5の顧客にとって、EHP6-8やS/4HANAには、アップグレードや移行に必要な労力、時間、費用に見合うような魅力的な新機能がなかったようです。

また、ソフトウェアが顧客によって高度にカスタマイズされている可能性も高く、アップグレードによってカスタマイズの問題を引き起こす可能性もあるため、顧客にアップグレードを躊躇させているのかもしれません。最低でも、アップグレードには徹底的な回帰テストが必要であり、場合によってはカスタマイズに手を加えなければなりませんが、それには破損のリスクや、問題が雪だるま式に大きくなる可能性もあるのです。

多くの人がS/4HANAにアップグレードする理由がほとんどないと感じている

2014年、SAPは当初、Business Suite 7とECC 6のメインストリームサポート終了期限を2025年と発表しました5(その後、SAPは期限を2027年に延長しましたが、対象になっているのはEHP6-8のみ6)。発表当時は、2025年は遠い先のことでしたが、今や期限は目前に迫っています。

SAPは顧客がS/4HANAに移行することで利益を得ており、サポート終了を「(移行の)動機付け」として利用しています。2年間のメインストリームサポートを追加で得るためにEHP6-8にアップグレードするという選択肢もありますが、価値があるとは言い難いです。Gleichmann氏は「そのようなプロジェクトには2年から2年半かかる可能性があり、一部の人にとってはすでに手遅れになっている」と語っています。4

すでに多くの顧客が、現在稼動しているもので十分であることを実証しています。実際、英国のRSA Insurance Groupのような企業は、耐久性のあるECCリリースを活用して、最先端を行く革新的な戦略を実行する一方で、アップグレードをしないことで大幅に削減できたコストを利用して、競争上の優位性を獲得し、成長と収益性の目標を達成するための最新テクノロジーへの投資を行っています。

繰り返しになりますが、ECCでこのような耐久性と機能性を備えたソフトウェアを作ったSAPに敬意を表したいと思います。

リミニ・スマート・パスという代案

顧客は「壊れていないなら、直さなくていい」という昔からの知恵を守っているのです。これは、ECCの安定性が高く、機能性が有効であることの証だと考えることができます。顧客は、ECCがうまく機能し、必要なことができることを理解しているので、アップグレードの必要性を感じていません。これらのEHP0-5の顧客にとって、EHP6-8やS/4HANAには、アップグレードや移行に必要な労力、時間、費用に見合うような魅力的な新機能がなかったようです。

また、ソフトウェアが顧客によって高度にカスタマイズされている可能性も高く、アップグレードによってカスタマイズの問題を引き起こす可能性もあるため、顧客にアップグレードを躊躇させているのかもしれません。最低でも、アップグレードには徹底的な回帰テストが必要であり、場合によってはカスタマイズに手を加えなければなりませんが、それには破損のリスクや、問題が雪だるま式に大きくなる可能性もあるのです。

6 SAP – Maintenance Timelines for SAP ERP 6.0, 20 September 2022

Scott Hays

Senior Director, Product Marketing

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