TCOからTCCへ:ベンダーと言う名の 「大家」にコスト管理を委ねてはいけない

Scott Hays
Sr. Product Marketing Director
Rimini Street
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TCOからTCCへ:ベンダーと言う名の 「大家」にコスト管理を委ねてはいけない

TCOとは 「Total Cost of Ownership」(所有コストの総額)の頭文字をとったもので、テクノロジー・ソリューションにかかるコストがソリューションの価格だけなのは稀であることを思い起こさせる言葉です。多くの場合、総コストを構成する他の多くの要素が存在します。

しかし、テクノロジー・ソリューションのTCO(所有コストの総額)について考えるとき、根本的な問題があります。それは、所有権を前提としていることです。

その前提は、かつて組織がソフトウェアの永久ライセンスを購入していた時代には、理にかなっていました。組織はライセンスを所有し、契約条件さえ守れば、年間保守料やその他の関連サービスにかかる料金をベンダーに支払い続けるかどうかにかかわらず、永続的にソフトウェアを導入し、運用することができたのです。

しかし、最近では、サブスクリプション・モデルが普及しており、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)契約に含まれることがほとんどです。大きな違いは、サブスクリプション・モデルでは、顧客はソフトウェアのライセンスを所有しない点にあります。顧客は、SaaS契約が有効である限り、ソフトウェアの使用を許可されているのです。この契約には通常、ベンダーのサポート・サービスや、ソフトウェアの動作環境の継続的なホスティングが含まれています。

SaaSへの移行とは基本的に、顧客を所有者から借主へ、そしてベンダーを大家へと変えるものなのです。

大家は価格をコントロールできる

TCO(所有コストの総額)の概念は、ソフトウェア・システムの運用と管理の側面において、顧客側にコスト削減の選択肢があることを前提としていました。それは所有者の特権です。しかし、所有者が借主になると、力のバランスは顧客からベンダーへと移り、大家であるベンダーが価格設定の主導権を握ることになるのです。

SaaSの世界では今後、TCOは「Total Cost of Ownership(所有コストの総額」ではなく「Total Cost of Operations(運用コストの総額)」を意味するようになるだろうと指摘する専門家もいます。その指摘は正しいかもしれませんが、所有者が借主に変わること、そして価格管理をベンダーに委ねることへの転換を示すものではありません。

それよりも今後は、Total Cost Control(コスト管理の総額)を意味するTCCになると考える方が正確でしょう。これは、ソフトウェアの使用権、ソフトウェアの実行に必要なコンピューティング・パワー、そしてサポート・サービスといった最も重要なコスト要素を、ベンダーがどのようにコントロールしてきたかを示しています。(幸いにも、顧客がベンダー以外のマネージド・サービス・プロバイダーを選択する選択肢はまだ残っています。)

賃料のコントロールを無しに

ベンダーがソフトウェアの使用権を顧客に貸与している以上、その気になれば、ベンダーは毎年価格を引き上げることができます。

16,000社のSaaSベンダーを対象とした調査によると、73%のSaaSベンダーが2022年8月から2023年7月までの12カ月間に価格を引き上げており、平均値は「インフレ率を大幅に上回っていた」ことが判明しました。クラウドコストは約6割の企業にとって予想以上に高く、CIOとCTOの約42%がクラウドの無駄を最重要課題と考えています。

自由市場経済の「見えざる手」は、ある程度の制御効果をもたらすかもしれませんが、価格上昇を抑えようとする市場の圧力が高まれば、顧客が価格上昇を理由にベンダーを切り替える可能性も高まります。

大規模なエンタープライズ・ソフトウェア・システムの場合、ベンダーの切り替えは簡単ではありませんし、切り替えのためのコストやビジネスへの影響は決して小さくありません。

ベンダーロックインと撤退障壁

マルチテナント型クラウドの展開とともに、SaaSモデルは、迅速な導入による参入障壁を低くすることと、乗り換えコストを抑えることで撤退障壁を低くすることを意図しており、これは、小規模なアプリケーション(「部門別」または「機能別」と呼ばれることもあります)には当てはまります。それらは、1年間使用してから別のプロバイダーに切り替えることも可能だからです。

しかし、大規模で複雑なERPシステムの場合、撤退には大きな障壁があります。切り替えコストは莫大であり、そのようなプロジェクトは非常に破壊的であることが多いです。このような場合、SaaSの顧客は、切り替えコストと混乱が非常に大きいことが分かった途端に、どうしてもベンダーにロックインされることになり、結果として切り替えが難しくなります。

TCOを削減し、ベンダーのTCCを防ぐ

しかし良いニュースもあります。それは「借主」ではなく「所有者」であり続けることで、「大家」であるベンダーにコスト管理を委ねる必要がなくなるということです。テクノロジー・ソリューションのコストをコントロールし、柔軟性を保つため、以下の対策を講じることができます:

  1. エンタープライズ・ソフトウェアの永久ライセンスをできるだけ長く保持する。
  2. 既存のソフトウェア・システムの寿命と価値を延ばす
  3. ERPのコア機能を維持し、必要なときに交換しやすいベスト・オブ・ブリードのアプリケーションを使用し、周辺をイノベーションすることによって、コンポーザブルERP戦略を追求する。
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