テレワークを実践するための3つのポイント

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テレワークを実践するための3つのポイント

COVID-19の影響で緊急事態宣言が発令され、多くの企業がその対応に追われていることかと思います。経済的な状況も非常に不明瞭な中、企業がどのようにして生き残っていくかが重要な課題となっています。

その中でも「テレワーク」、「在宅勤務」の実現は大きなテーマの一つです。 どの企業にとっても、従業員の健康・安全は最も優先度の高い項目の一つだからです。また、政府、都道府県からの要請もありますので、突然、テレワークが開始となることも多いようです。ある企業のIT部長とお話をする機会があったのですが、社内の他部門から「会社としてテレワークを実施していいのか?」という問い合わせがIT部門に集中し、本来であれば全社の方針として決定する内容であるため、困惑されていると聞きました。テレワークは、IT環境だけが成立すれば実現できるものではなく、その他の多くの要素が絡み合っています。弊社では、この騒動以前からテレワークを導入・実践してきました。その経験から得た学びを皆さんに共有したいと思います。

弊社では、以前より緊急時の業務体制等を定めたEOP(Emergency Operation Plan)を策定しており、本年早々から、エンジニアを含む全社員のテレワーク体制へと移行しております。もちろん、COVID-19の感染拡大を抑えるためのものですが、同時に、ご契約いただいているお客様へのサポートを社員の罹患で中断しないための措置でもありました。現在、世界各国の多くのお客様に、昨年までと同様の品質でサポートを継続しております。

弊社の社員で最も多いのが専門性の高いエンジニアであることが、テレワークに移行しやすかったということはあるでしょう。しかし、要因はそれだけではありません。テレワークを実現していくには、私は3つのポイントがあると考えています。一つ目は人事面のポイント。二つ目はIT環境とセキュリティーについて。最後に、業務プロセス標準化とコミュニケーションです。順にご説明します。

就業時間で人事評価をしない

まず、人事面では「社員を就業時間で評価しない」ことが大きなポイントだと考えています。 弊社では、社員が自由に働ける環境を整備していますが、普段はオフィスで勤務をしている社員からのフィードバックの一つに、在宅ではオフィスよりもモチベーションを維持することが大変だというものがありました。小さなお子さんやご家族が家にいらっしゃったり、人によっては、他の家族も同じように在宅勤務になって家族そろって在宅で仕事をするといった状況が生じたりしています。そのような状況下では、集中力を維持するのが難しい場合もあるようです。もちろん、お客様のシステムを預かっている以上、緊急案件が発生し対応が必要となることはありますが、そこはプロフェッショナルなエンジニアですから、一気に集中して対処を行っています。しかし、緊急時ではないテレワークの状況では、何時から何時まで働いたか、といった労働時間を監視しないというのが弊社の方針です。

弊社では、エンジニアの評価軸は2つに絞っています。サポート件数(問い合わせ件数)と、サポート終了後のお客様満足度です。この指標は、毎週行うマネジメントミーティングでレビューを行い、問題があると思われる時に、すぐに対応できる仕組みができています。この2つの評価軸で、エンジニア個人として、また、日本チームとしての達成度を検証することにより、テレワーク中のエンジニアを勤務時間で評価する必要がなくなります。(なお、過労働防止の観点から作業時間の報告は行っています)

大切なのは、マネージャーが各チームのエンジニアを信頼・尊重するカルチャーの醸成です。これが、この評価制度を実現するための大きな要素となることも付け加えておきます。

テレワークを実現するIT環境と安心できるセキュリティーの検証

次にテレワークを実現するためのIT環境ですが、いくつか必要な要件があります。まず、会社のサーバーとのセキュリティレベルの高い接続を確立することが必要です。弊社の場合、Salesforce.comをはじめとして、社内で利用するほとんどのアプリケーションはSaaS形態のものを使って、統一の認証システムを使い、PCやスマートフォンを限定することで、セキュリティ面でのリスクは大きく軽減されています。

弊社では、お客様のシステムをお預かりする上で、お客様の開発機もしくは品質保証機へのリモート接続をお願いしています。この場合も、在宅勤務中の社員が自身のPCから直接お客様の環境にログインするのではなく、弊社の米国のサーバーセンター(二重化されています)へアクセスし、その監視の下でお客様の環境へとアクセスする仕組みを構築しております。もちろん、セキュリティーを十分に検証した方式での接続ですが、弊社への移行プロジェクトの中でお客様のセキュリティー要件をしっかりと相談させていただいた上で、対応しております。このような環境を以前から十分に検証した上で実現していたため、今回のEOPの実施に際しても慌てることなく行うことができました。

セキュリティーに関しては、IT環境だけを実現すればよいわけではありません。各社員が正しい知識を持ち、正しいプロセスでビジネスを進めることが重要です。弊社では、毎年セキュリティーのトレーニング受講が必須となっており、日本の責任者である私も例外なくトレーニングに参加しております。

業務プロセスの標準化と円滑なコミュニケーション

最後のポイントはプロセスの標準化と密なコミュニケーションです。弊社はISO9001および27001に準拠して業務プロセスを標準化し、認証を取得、更新しています。これも含めて、プロセスがグローバルで標準化されていることが、コミュニケーション量が通常より少なくなる在宅勤務においても、正確な業務プロセスを遂行するための力となっています。

コミュニケーションについては、今回の全社テレワークの移行にはMicrosoft Teamsが大きく貢献しています。これは、必ずしもTeamsに限らず、ZoomやSlack、または、それらの組み合わせでもよいでしょう。弊社では、グローバル共通のコラボレーションツールとしてTeamsを以前より使用していたため、現在も同ツールを利用したコミュニケーションを積極的に行っています。平常時でも、グローバル体制で販売活動、サポート活動を行っているため、グローバルチームとのコミュニケーションにはTeamsを活用していました。今回、ほとんどの社員が在宅勤務へと舵を切った後も、全員がTeamsを使ってコミュニケーションしています。Teamsの機能では、ちょっとした連絡はチャットで行い、必要に応じてボタン一つでWeb会議に切り替えることができます。Web会議ではオフィス製品(PowerPoint、 Excel、 Word等)を共有、修正しながら作業を行うことができます。必要であれば、時差の問題はあるものの、世界の仲間を同じ会議に即時に呼び込むことも可能です。これにより、テレワークで対面での会議が不可能になったデメリットを大きくカバーしたうえで、別次元の効率性を生み出せています。

ただ、いきなりTeams等のツールを導入しても、効率的なコミュニケーションを行うことは難しいかもしれません。弊社でもTeams導入当時を振り返ると、今ほど効率的なオペレーションはできておりませんでした。やはり、こういったツールを使ってコミュニケーションをするカルチャーの醸成は重要であり、導入からの経験が現在に生かされています。

弊社ではこのようにしてテレワークを継続していますが、社員全員から自由にフィードバックをもらう場も設定しています。Teams上に誰でも書き込めるスレッドを設けて、気がついたことを自由に書き込んでもらっています。これは社員には好評だと感じています。在宅勤務の唯一の課題は「家にいるのに飽きた」ということですが、対応策として、各自が自由に食事やアルコール・ノンアルコールの飲み物を持ち寄っての「オンライン飲み会」を、話題になる前に開催してみました。オンライン飲み会を開催してみると、お子さんや家族の皆さんが登場したり、愛犬が登場したり、また、自慢のギターが披露されたりと、思いのほか楽しい会となりました。最初はみんなネットを通じた飲み会には懐疑的だったのですが、なんと再度の開催リクエストをもらうほど好評だったのです。こうしたことを通じて、社員同士の仕事以外のコミュニケーションを図るのも重要なのだと思います。
最後に、ひとつ付け加えさせていただくと、私も日本法人代表として、通常より多くのメッセージを社員に送るようにしています。こういうことも在宅勤務・テレワークのモチベーション維持に重要だと思います。

この3つのポイントを押さえて、効率的なテレワークを実践し、COVID-19の拡大を防ぐことが、企業として社会に貢献できる方法の一つだと考えております。社会全体でこの状況に立ち向かい、一日も早い収束を願います。

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