
FOMO(取り残されることへの不安)は、主にSNSや個人の活動でよく話題になりますが、企業向けソフトウェアのロードマップにも似た現象があります。
ERPソフトウェアが登場したのは1960年代。その後数十年の間に、多様なERPベンダーや製品が次々と登場しました。そして1992年、SAPはSAP R/3を導入し、初のクライアント・サーバー型ERPソフトウェアを発売しました。
ERPソフトウェアのベンダーは、新規顧客の獲得と既存顧客の維持を目的に、次々と新機能や拡張機能をリリースし、熾烈な競争を繰り広げていました。新バージョンやサービスパック、エンハンスメントパックには、企業の業務効率を向上させ、ソフトウェアの価値を高めるための最新機能が盛り込まれていました。SAPユーザーにとって、毎年の保守契約のもとで提供される最新機能は楽しみのひとつでした。しかし、そのビジネスモデルは大幅に変更され、ベンダーにとって有利な形へと移行していきました。
2010年までの間に、ERPソフトウェアは機能が充実し、安定性も向上したため、新機能の追加スピードやその数は徐々に減少していきました。同時に、ベンダーは次世代のクラウドベースのソリューションへの投資を開始しました。
2016年、SAPはECC6(R/3の後継)の最後のエンハンスメントパック(EHP 8)を提供し、ECC向けのエンハンスメントパックは今後提供しないと発表しました。それ以来、数万人に上るSAP ECCのユーザーは、年々増加する保守費用を支払い続けています。その対価としてサポートは受けられますが、カスタマイズに関するサポートは含まれず、新機能の追加もありません。
より多くの顧客を最新製品へ移行させるため、ベンダーはFOMO(取り残されることへの不安)を煽り始めました。「アップグレードを継続しないと、最新の機能を逃してしまう」という考えを植え付けようとしています。しかし、その最新の機能が必ずしも各企業の将来のビジネスニーズに合致するとは限りません。
FOMO(取り残される不安)か、それともFORGO(見送る)か
SAP ECCのユーザーには、新機能がもはや提供されていません。実際、2016年以降、一切追加されていません。
S/4HANAのオンプレミス版を利用している企業も、状況は少し異なるものの、似たような立場にあります。SAPは、S/4HANAオンプレミスユーザーに対して、主要リリースごとに3回の「Feature Pack Stack」を提供する予定ですが、本当に価値のあるプレミアムイノベーションはS/4HANA Cloudのユーザー限定で提供すると発表しました。1クラウド版が登場する前にS/4HANAへ移行した企業のロードマップは、いわば行き止まりの状態です。最先端の機能を得るには、S/4HANA Cloudへ移行し、RISE with SAPやGROW with SAPといったプログラムに参加するしか道がないのです。
その結果、多くのCIOは取締役会に出向き、追加予算を求めざるを得なくなっています。もしSAPが今後、革新機能の提供モデルに再び変更を加える場合、すでに多額のコストをかけ、ビジネスに混乱が生じている企業にはどのような影響が及ぶのでしょうか。
世界中の多くのSAPユーザー企業は、FOMO(取り残される不安)に振り回されることなく、現行のバージョンを最大限に活用し、そのライフサイクルを延ばすという選択をしています。彼らは、長期間にわたるアップグレードサイクルに縛りつけられていた資金と人材リソースを再配分し、代わりに、ビジネスとって本当に必要な領域に投資し、イノベーションを生み出す道を選んでいるのです。
リミニストリートで、FOMO(取り残される不安)をFOR SURE(確実性)に
2005年、リミニストリートは市場に参入し、企業がベンダーの年間保守契約を独立系プロバイダーへ切り替えるという選択肢を提供し始めました。当社の顧客の多くが、将来のソフトウェア拡張の不透明な価値よりも、第三者保守の自由度や迅速な対応を選んだのは、当然の流れとも言えます。
多くのSAPユーザー、特に自社の業務プロセスに最適なシステムにカスタマイズしている企業は、ベンダーの保守からリミニストリートのサポートサービスに切り替えることで、以下のメリットを享受しています:
- 現在のソフトウェアバージョンをより長く維持できる自由
- ベンダーが通常サポートしないカスタマイズにも対応する包括的なサポート
- 「サポート継続のためだけのアップグレード」を強制されない環境
- ベンダーの枠に縛られず、必要なイノベーションを自由に選択・適用できる柔軟性
FOMO(取り残される不安)という罠に陥らないでください。新機能を逃すわけではなく、むしろ、自社にとって価値が不確かなものから解放され、自社にとって本当に必要なものを自由に選べる環境を手に入れられるのです。今、そして将来にわたり自社のビジネスにとって最適な選択をし、IT投資とロードマップの主導権を取り戻しましょう
覚えておいてください。SAPからアップグレードの予定を尋ねられたら、「なぜですか?」と答えましょう。
私たちは、貴社の既存システムにおけるイノベーションの加速をお手伝いします。SAPの専門家にこちらからご相談ください。
1 The Register – SAP CEO push for cloud-only ‘innovation’ shatters users’ trust in German-speaking heartlands