ハイブリッドITを活用してDXを実現

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ハイブリッドITを活用してDXを実現

ご存じのように、今日クラウドは、エンタープライズ・ソフトウェアにおいて圧倒的な存在感を示しています。世界的な競争の激化により、一部の企業では、新しい顧客の要求に迅速に対応するために、ITの一部をクラウドに移行の時期を早めることを行っています。弊社のクライアント企業様においても、クラウドへの移行が急速に進んでいる感触があります。一方で、ビジネス上の理由によって変革を一時停止せざるを得なくなった企業もあり、クラウド プロジェクトは予想以上に長い期間に渡って実施されることもあります。どちらのシナリオも、ハイブリッドIT環境が鍵になります。ハイブリッドITは、IT部門がコンピューティングのコストを削減して、データを管理し、競争優位性を高めるための迅速なイノベーションを実現するための実用的でスマートな戦略であり、今後ますます普及すると考えています。特に日本では、最近の日本ガートナー社のレポートにおいて、クラウド コンピューティングの国内での導入率は平均18%※1と、導入には慎重な企業が多い状況ですので、ハイブリッドIT環境はさらに注目されています。

ハイブリッドITが主流に

ハイブリッドITとは、クラウドと非クラウドのハードウェアとソフトウェアを混在させたIT環境のことです。企業がデータやワークロードを選択的にクラウドベースの環境に移動させつつ、他の技術をノンクラウド環境に保持するために利用している代表的な戦略です。ほとんど企業では、レガシーなアプリケーションを含めて、すべてを一気にクラウド環境に移管することはできないので、現実的な戦略でもあります。ハイブリッドIT環境には、マルチクラウド(複数のプロバイダーによるクラウドサービス)、ハイブリッドクラウド(パブリッククラウドとプライベートクラウド)、または非クラウドのコンポーネントに加えて両方を組み合わせたものなど、さまざまなハイブリッド運用モデルが含まれています(図1)。実際、ほとんどの企業はすでに複数のクラウドプロバイダーを利用しています。
多くの企業では、従来からライセンスされているソフトウェアをローカルのデータセンター(ノンクラウド)で実行し、Salesforce、Workday、ServiceNowなどの1社以上のベンダーと契約した最新のSaaSクラウド・アプリケーション(クラウド)と組み合わせて利用しているケースがよく見られます。場合によっては、ライセンスされたソフトウェア(ノンクラウド)を、AWSやマイクロソフト(クラウド)などのハイパースケールのInfrastructure As A Service(IaaS)プロバイダーに「リフト&シフト」することもあります。どちらのシナリオも一般的なハイブリッドIT構成です。

図1. ハイブリッドIT

ハイブリッドITが重要な理由

デジタルトランスフォーメーションには、まったく新しいITを実現するイメージがありますが、実際は、クラウドに展開されたアプリケーションやインフラストラクチャをすべて新しく導入してやり直す必要はありません。ハイブリッドITソリューションは、ほとんどの企業にとって現実的なものであり、クラウド以外のソリューションは、デジタルトランスフォーメーションのロードマップを実行するための基盤を提供します。アプリケーション開発やテストのワークロード、ディザスタリカバリ機能、データウェアハウス、大量のデータ(IoTなど)をクラウドに移行したり、クラウドSaaSアプリケーションに戦略的に投資したりするなど、段階的な変革のステップを踏むことで、クラウドとノンクラウド環境のポートフォリオ、つまりハイブリッドITを実現しています。要するにセキュリティー、アプリケーション、データの統合は大事です。企業が現在のIT環境に多大な時間、費用、工数を投資していることを考えると、大幅なカスタマイズを含めて、必要に応じて十分なパフォーマンスを発揮しているソリューションを放棄することを正当化することは困難です。仮想化によってコンピューティング・ニーズを十分に簡素化してクラウドに完全移行できる企業もありますが、ほとんどの企業では、複雑でビジネス・クリティカルなアプリケーションなど、インフラストラクチャであれアプリケーションであれクラウドではない形で残っているテクノロジーを所持していると思います。
最近の市場の変化や昨今のCOVID-19により、一部の企業はクラウド・プロジェクトを保留せざるを得なくなった。また、顧客の新たな要求に対応するために、クラウド ロードマップのタイムラインを早めている企業もある。しかし、既存のソリューションを一度にすべて置き換えることはできないため、戦略やペースを合わせた移行アプローチが必要です。どちらかのシナリオを経験している企業にとっては、ハイブリッド IT アーキテクチャが優位になるでしょう。クラウド プロジェクトが企業のハードウェアとソフトウェアのポートフォリオを段階的に移行させていく間、移行期間は何年にもわたって続くことになります。ハイブリッド IT は移行期間中も存続するが、中には無期限に存在する場合もあります。ハイブリッド IT のシナリオが長期化するもう 1つの要因は、SAP S/4 HANAに見られるようにクラウド製品の大半は成熟過程にあり、非クラウド製品と比較して機能的に実装を欠いていることからです。多くのITコンポーネント(特に、大きな計算能力を必要とする高度に複雑でカスタマイズされたアプリケーション)は、クラウドには1対1の機能的な同等性がありません。CIOは、インフラストラクチャを仮想化し、クラウド製品の成熟を待つことを選択しています。

ハイブリッドITとクラウドの威力

私のWorkdayでの経験をみても、クラウドはSystems of Engagementにおいてとても魅力的です。かつてのERPのように、世界中のBest Practiceが年に何回かのサイクルで実装されており、DXや顧客エクスペリエンスなどで、最先端のやり方を追求していけます。それを組み合わせた、ハイブリッドITモデルでは、CIOは差別化のためのクラウド投資、コスト削減、競争優位性のためのイノベーションのサポート、成長力の強化などに注力することができます。ほとんどの場合、企業は、クラウド以外の成熟されたソリューションをすぐにすべて捨てることはありません。特に、ソリューションがうまく機能している場合や、クラウドに移行してもそもそもビジネスの改善につながらない場合はそうです。かなりのケースでは、すべてのERPスイートのコンポーネント全体での高価なフルスケールのクラウド移行には莫大なコストがかかり、その割には特別な技術革新もなく、ビジネス価値を高めることは困難です。ERPがSystems of Recordの代表であり、トランザクションを問題なく処理するためのものだからです。また、新しいOracleやSAPのSaaS製品を導入するために、ERPシステムをSaaSに移管する必要はありません。代表的なSaaSアプリケーションとは、開発機能をもち、他のアプリケーションと統合することが可能です。
ハイブリッドIT環境では、ビジネスニーズを満たす非クラウド型のハードウェアとソフトウェアをクラウドサービスと共存させることができます。ERPなどのビジネスを差別化できないエンタープライズ・アプリケーションをクラウドに移行するのではなく、ノンクラウドの状態を維持するのが賢明です。弊社の日本のお客様でも、SAP ECC 6.0をパブリック クラウドのIaaSの環境に移行され、保守・運用のコスト削減しながら、寿命とROIを延長されているケースが多くあります。戦略的なクラウド・プロジェクトは、デジタル・テクノロジーによる変革を可能にするだけでなく、加速させるためにも活用すべきです。
ハイブリッドIT環境では、CIOはテクノロジーの入れ替えを余儀なくされることなく、ビジネスのロードマップに応じて柔軟に対応することができます。これは、特に頻繁に変更する機能(または迅速な拡張が必要な機能)がコアERPスイートから持ち出され、クラウドに移動された場合に、技術変更にかかるコストを削減するのに役立ちます。

ハイブリッドITは現実的で、現実的で、スマートな戦略

ハイブリッドITには、長期的なIT戦略としての持続力があります。 企業がクラウドを活用して差別化能力を創出する際には、ITポートフォリオの中のクラウド以外の要素を見失ってはならない。クラウド機能と非クラウド機能への投資とサポートのバランスを取る必要があります。コスト管理、競争優位性のためのイノベーション、成長など、ビジネスの専門家がハイブリッドIT環境の構築を推進できるようにしましょう。

※1 ガートナー、日本におけるクラウド・コンピューティングの導入率は平均18%との最新の調査結果を発表https://www.gartner.com/jp/newsroom/press-releases/pr-20200514