2025年遂にEOSを迎えるSAP各製品バージョン別対策をアップデート。節目を逆手に取り、現環境で実現するモダナイゼーションする戦略とは

代表取締役社長 脇阪順雄
< 1 分(想定読了時間)

いよいよ2025年を迎え、ECC6.0や一部S4/HANAのサポート終了の年となりました。SAPは今まで以上にRISEへの移行を、各製品バージョンを利用するユーザーにあの手この手で迫っています。

しかし、本当に今RISEへ移行することが“最善の選択”なのでしょうか? 

2025年という節目を迎えた今、各企業が置かれている状況やバージョンごとのリスクを冷静に見極め、より現実的で持続可能な選択肢を検討する必要があります。

その判断、3年後にも通用しますか? 

2025年問題を考えるとき、システムだけでなく世の中全体の変化スピードにも目を向けるべきです。 

自国至上主義から発生する、貿易戦争の行方が不明瞭 

ソフトウェア業界のサブスク化はすでに加速中(買い切りモデルは絶滅危惧種に)
地政学リスクやコスト変動により、サプライチェーンや利益構造が不安定に 

生成AIの進化により、ERPそのものの価値が数年で塗り替えられる可能性も 

「今の正解」が「3年後の失敗」にならないよう、柔軟性のある選択が求められています。

見逃されがちな「2025年の崖」

2027年問題で、ECC6.0の保守切れに注目が集まりがちですが、実は2025年に保守終了を迎えるECCだけではなく、S/4のバージョンが多数存在します。 

特に注意すべきは以下のバージョン:
ECC6.0(EHP5以下):2025年でメインストリーム保守終了 

S/4HANA 2020以前:拡張保守も2025年で終了
 

保守終了により、以下の影響が出る可能性があります: 

セキュリティ・法改正対応なし 

OS・DB対応不可 

・SLAなし、つまり障害対応の保証がなくなる
気づいたときには「選択肢が崖下に落ちていた」なんて笑えません。 

カスタマースペシフィックメンテナンスは“延命”の名を借りた“リスク温存”? 

保守終了後、SAPが提供する“延命策”として知られるのがカスタマースペシフィックメンテナンスです。 

一見「まだ保守が受けられる」と思われがちですが、実態は次のような制限つき: 

法改正・税制変更には非対応 

新しいOSやデータベースには非対応 

障害時の応答保証(SLA)なし 

パッチの追加は不可(既存のみ利用可) 

つまり、「保守料は発生するが、保守の中身は極めて限定的」というグレーゾーン。いざというときに「想定外でした」では済まないリスクも孕んでいます。 

RISEへの移行、果たして今すぐ必要? 

SAPは2025年以降も保守を延長する条件として、「RISEへの移行」を強く推奨しています。 

しかし、この選択には大きな前提と制約があります。 

2033年まで保守を維持するには、今すぐRISE with SAPの契約が必要 

一度契約すると、簡単には抜け出せない 

・ECC以外のモジュール(CRM/SRM等)は対象外のケースも 

将来が不確実な今、8年以上先までのコミットメントをすることが本当に現実的か、慎重に判断する必要があります。

出典:TechTargetジャパン(2025年2月10日公開) SAPの「2027年問題」を先送り? 保守期限を2033年まで延長する“条件”
https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/2502/10/news05.html

バージョンアップの2つの道とその限界 

多くの企業が検討するのは、SAPシステムのバージョンアップです。 

主に以下の2パターンがあります: 

  1. ブラウンアップグレード(技術的アップグレード) 

・現行機能を保ったまま、新バージョンへ移行 

・リスクは小さいが、経営的なメリットがほぼない 

・高コスト・長期間・労力に見合う成果が出にくい
グリーンフィールド(スクラッチ再構築) 

新システムとして構築し直すことで、柔軟な設計が可能 

・BPR(業務改革)にもつながるが、数年単位の大型プロジェクトに 

現業部門・経営層の協力が不可欠、失敗リスクも高い

現環境で実現できる“破壊なき変革”という選択

すべてを今すぐ変える必要はありません。むしろ、変化の激しい今だからこそ段階的な対応が合理的です。 

たとえば: 

・ERPのコアは維持し、第三者保守に切り替えることでコストと時間を確保 

顧客接点や製造領域など、成長に直結する周辺機能から先行モダナイゼーション 

将来的なS/4HANA移行も視野に入れ、“クリーンコア化”を進める 

これにより、システムの安定を維持しながら、将来への布石も打てるという、柔軟性の高い戦略を描けます。 

経営判断に必要なのは「全体像の把握と冷静な選択」

RISEやCSM、バージョンアップや第三者保守。 

それぞれに利点もリスクもあります。 

重要なのは、“なんとなく流される”のではなく、自社の状況に即した冷静な判断を下すことです。 

まとめ:Transform Without Disruption(破壊なき変革)

世の中の変化は加速しており、もはや“昔のやり方”では通用しない時代です。 

ソフトウェアのサブスク化、SAP2025年問題、見えない将来に備えるためには、選択肢を失う前に動くことが重要です。 

業界全体が「シンプルなERP」「柔軟なアーキテクチャ」へと向かう今、破壊ではなく“しなやかな変革”こそが、最も現実的な戦略です。 

ご覧頂き誠にありがとうございました。より詳細な内容は“オンデマンド配信”で解説しております。
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