破壊的CIOが現状打破でイノベーションを推進

Sebastian Grady
President, Strategic Initiatives
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破壊的CIOが現状打破でイノベーションを推進

CIOはもはや単なる優れた技術者ではありません。現代のCIOは、単に優れた技術者でいるだけでは済まされないのです。明日の成功を手にするCIOは、収益生成者であり、顧客を引き込む力を備えたグルであり、ビジネスリーダーです。成功するCIOは、組織内のビジネスモデルに変革を起こします。つまり、破壊者になりつつあります。これにはどのような意味があるのでしょうか?

授業をさぼったり、映画上映中におしゃべりをしたり、大人の会話の邪魔をしたり – 私たちの成長の過程で「破壊」とは悪い言葉でした。しかし現在のビジネスやテクノロジーの分野では、「破壊」とは魔法の力を持つ言葉なのです。

「disruptive technology(破壊的テクノロジー)」という言葉は、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の卒業生で現在HBSの教授を務めるClayton Christensenが1997年に自身の著書『The Innovator’s Dilenmma(革新者のジレンマ)』で初めて生み出した言葉です。

後の著書『The Innovator’s Solution(革新者のソリューション)』でChristensenは、「disruptive technology(破壊的テクノロジー)」を「disruptive innovation(破壊的イノベーション)」という用語に置き換えています。これは、性質上、本質的に破壊的な技術や持続性がある技術はほとんどないことに彼が気づいたためです。むしろ、破壊的な影響を生み出すのは、テクノロジーが可能にするビジネスモデルであることを認識したのです。

1908年に発売されたT型フォードは破壊的テクノロジーですが、それに先立つ30年間の燃焼機関自動車は破壊的テクノロジーではありませんでした。なぜなら、燃焼機関自動車は大量生産されなかったからです。大量生産を可能にしたのは、組立ラインのビジネスモデルでした。

現在の破壊者たちをご紹介しましょう。まずは、Uberです。2010年、Uberの車は10台、パートナーは100人でした。6年が経ち、乗車数が10億回に達すると、Uberは100年の歴史を持つタクシー業界を破壊しました。

Uberが最も優れているのは以下の3点です。

  1. ドライバーの評価ができる。
  2. 携帯電話で配車を依頼でき、数分で迎えに来る。
  3. 割安な料金で優れたサービスを受けられる。

現在では、タクシーよりもUberを利用する人の方が多くなっています。何より、早くて安いプレミアムサービスを望まない人などいるでしょうか?そんなサービスになら、いつでも喜んで支払うでしょう!

Amazonもこうした例の一つです。1994年、ニューヨークの金融マンだったJeff Bezosは会社を退職し、目覚ましく成長するインターネット商取引に目をつけて飛び込みました。彼にはオンラインで「何でもそろう店舗」を始めるというビジョンがあり、最初に販売する商品を書籍にしました。起業から2ヶ月で、Amazonは米国内の全50州と45ヶ国に書籍を販売しました。もっと簡単に書籍を購入したいという希望が人々にあったことがわかったのです。インターネットがその希望に応え、Amazonがそれを可能にしました。同社はドットコムバブルを持ちこたえ、現在では世界最大のオンライン小売業者になりました。

ただ、Amazonは書籍の成功に満足してあぐらをかいていたわけではなく、Amazonウェブサービスを起ち上げました。Amazonは、標準化された自動化ウェブサービスの完全な小売コンピューティング・インフラを構築しました。ここには、全く新しい収益ストリームを生み出すストレージとバーチャルサービスも含まれます。

AmazonはB2CとB2Bの両方の破壊者であり、これは極めて珍しい例です。

以上、破壊者の秘密を知る企業の例をご紹介しました。これらの企業の創設者たちは、既存テクノロジーの中に新たなイマジネーションを見出しました。改革の狼煙を上げ、廃れゆくモデルをつかみとり、テクノロジーの限界に挑戦してより良いソリューションを適用したのです。彼らにはどんな秘密があるのでしょうか?破壊者には3つの共通した特徴があるようです。

  1. テクノロジーで発想を転換する。
  2. 消費者によって消費される。
  3. 決して満足しない。

破壊の機が熟した産業が、現在もいくつかあります。顧客にそれほど特化していない産業です。取引先の銀行、航空会社、クレジットカード会社、ソフトウェアプロバイダーに最後に連絡したのはいつですか?どのような経験をしましたか?

現在のCIOにとって、これはどのような意味を持つでしょうか?古いルールを投げ捨て、「顧客エンゲージメントを改善し、競合他社から市場シェアを奪い、事業を飛躍的に成長させるにはどうすればよいか?」という質問を投げかけるような、新たなレンズを通してビジネスのモデルを見直す行動が求められているのです。ビジネスでデジタル・トランスフォーメーション・イニシアティブを推進することは、今や、CIOとしてのあなたに課された役割です。

ではどこから手を付ければいいでしょうか?デジタル化はなぜそれほど難しいのでしょうか?理由は2つあります。第一に、既存テクノロジーの大半はプライムタイム対応が整っておらず、独自のソリューションを構築するかベンダーのアプリケーションを活用するかCIOが苦悩している点が挙げられます。第二に、通常のIT予算ではまかないきれない大規模案件だからです。

業界アナリストによると、一般的なIT予算の約89%は現状業務の維持に費やされ、革新的なイニシアティブに充てられる予算はわずか11%です。この革新的なイニシアティブこそ、実際に収益向上、費用削減、顧客エンゲージメント、競合他社からの市場シェア奪取につながるにもかかわらず、です。こうした目標を達成するには、あなたが自らの責任で支出モデルを根本から変革するしかありません。

当社の業界、つまりエンタープライズソフトウェア・サポート業界を例に説明しましょう。この業界は、破壊の機が熟した業界です。ソフトウェアベンダーが牛耳る数十年来の古いモデルは、現在のCIOの大半にとってもはや不十分です。

時代遅れのITモデルにとらわれているわけにはいかないのです。破壊者になりたければ、イノベーションへの投資予算をもっと確保しなければなりません。CIOが厳密に技術者以外の何物でもないという時代は終わりました。最も優秀なCIOは収益を生み出します。テクノロジーを活用して新たなビジネスモデルを生み出す事業家たちです。

当社顧客である製造業界のメーカーは、その最たる例です。このお客様は、商業・産業市場のメタルビルの大手メーカーで、収益は10億ドルを超えます。CIOがサポートをOracleからRimini Streetに移行すると、たちまち同社の年間総維持費が75%削減されました。これを受けてCIOは、節約された年間130万ドルという多額の資金を、顧客対応のEコマースポータルに再投資しました。 この投資から、現在では年間1億2,000万ドルの追加収益ストリームが生み出されています。これこそ破壊といえるでしょう!

このような例からも、たとえ予算面で困難に直面するとしても、今ほどCIOとなるのに絶好の時期はないことが明らかです。デジタルと顧客に重点を置く企業は、CIOがオペレーションのITをはるかに超える貢献を見せることを当てにしています。それに成功すれば、自社と業界他社の差別化が実現します。こうした企業は、「イノベーション・アジリティ」戦略を採用し、自社のために様々な選択肢が開ける新たな道を選んでいます。

イノベーション・アジリティ戦略とは、人材、資金、時間などの資源を自由に解放し、変化をもたらすビジネスモデルへの投資を可能にすることです。

例えば、イノベーション・アジリティ・アプローチでは、GartnerやForresterが推奨するようなハイブリッドIT環境で、自社オンプレミス・アプリケーションをクラウドアプリケーションとまとめて管理できます。

既存のビッグデータ機能を活用し、企業の機動力や社会的ソリューション、さらにはその先を目指して推進することができます。小売業者の場合は、収益を押し上げる重要な「オムニチャネル・プレゼンス」イニシアティブ向けに、資金を解放できます。

このように資源を解放してこそ、組織全体でイノベーションを進め、事業部門を強化し、従業員と顧客の両方への対応力を向上できるのです。シンプルな発想転換で、可能性は無限になります。考え方一つで、次のUberを起ち上げることもできます。破壊者のように物事をとらえれば、活気に満ちた変化を組織にもたらすことができます。

W. Edwards Deming はかつてこう言いました。「誰も変わる必要などない。生存は強制ではない。」だからこそあえて、ぬるま湯につかって現状維持に終始するのではなく、変化をもたらす作用因子になろうではありませんか。時代の波に乗り、現在のビジネス手法に変革を起こしましょう。

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